SUNSET VIBES

中年を豊かに楽しく!

じぶんの小さな「箱」から脱出する方法【読書レビュー】

この本には、良くも悪くも文学性はない。
文学特有の混沌も、曖昧さもない。

わざわざ、そんなことを書くのは、
この本は文学性がなくても充分価値があります。

そしてもう一つ。

AI時代に文学性の価値はむしろ上がると
思っているところもあります。

論理も整理もAIがやってくれる。

でも、人間の矛盾や混沌は、
そう簡単には処理できない。

この本は文学ではないし、
哲学書でもないけど、
扱っているテーマは
かなり哲学的。

文体こそマイルドだが、
読む人によっては暴力性すら
感じるかも知れない。

やさしく、理詰めで、殴ってくる。

概要

物語はエリートサラリーマンの転職先での出来事からはじまります。
合理的で、成果を出してきた男。

丸ごと自分ではないけど、
正直、どこかシンパシーを感じる部分があるし、
思考の回路に既視感がある

本書の核になるのは、飛行機のエピソード。

窓側を確保し、隣に座られないように荷物を置く人。
席が離れてしまった夫婦。

一見すると、ただのマナーの話。

でも本書はそこから
「自分は正しい」という思考の癖とその危うさを暴き出します。

この本の恐ろしさは、
自分がこれまで積み上げてきた正当化を
完膚なきまで否定してくれるところ。

読んでてヒリヒリする

仕事の話も、夫婦の話も、かなりリアル。
息遣いが聞こえるほど。
リアルで、アンダーグラウンドで、ハーコー。

40歳を過ぎてから、
どれだけ自分を正当化してきたのか。

「自分は悪くない」
「仕方なかった」
「相手が分かっていない」

悪意はない。

むしろ誠実だった。(その時はそう思った)

だからこそ、ヒリヒリする。

全てがタスクになってないか?

仕事では、成果を出す。
タスクを分解し、優先順位をつけ、実行する。

それを一日8時間以上やっている。

子供が生まれてから、
タスクはさらに増えた。

ミルク
オムツ
保育園の準備
予防接種のスケジュール
夜泣き対応

夫婦の会話も、気づけば業務連絡。

「明日どっちが迎え行く?」
「ゴミ出しお願いできる?」
「それ、先に言ってくれたら助かったのに」

どれも正しい。

でも、どこかで思っている。
こっちはこんなにやっているのに。
夫婦の感情もすれ違ってくる。

子供を授かる事は感謝すべきこと。
でも人間としての本性が剥き出しになるタイミングでもある。

疲れている。
余裕がない。
だからロジックで処理する。

感情より、正しさ、合理性。

気づけば、家庭もプロジェクトのように
捉えていた自分に気づきました。

効率は悪くない。
でも、なんか違う。

この「なんか違う」が、
ずっとモヤモヤした感情を数年抱えてました。

過去の捉えかた

今の自分には、何か課題があると漠然と感じてて、
違和感、と言ってもいいかも知れません。

いつ頃までは、もう少し素直だったのか。
いつから、こんなに自分の正しさに固執するようになったのか。

そうやって過去を振り返る。

自己分析は大事だと思う。
キャリアも、家庭も、棚卸しは必要だ。

でも、やっているうちに
これもまた、自分を守る作業になっていないか。

「あのとき忙しかったから」
「環境が悪かったから」
「仕方なかった」

説明はできる。

でも説明できることと、
箱から出られることは、別。

過去を掘るほど、
自分の正しさの証拠集めをしているだけになる。

そして結局、心は少しも軽くならない。
ポジティブにもならない。
ただ、思考が迷子になる。

この本が面白いのは、
過去を分析させるのではなく、

「いま、相手をどう見ているか」
を問うところ。

残酷だけど、救いもある。
あくまで今がどうかだから。

箱ってなに?

では、箱とは何か。
見方によっては難しい話ではなくて。

自分は正しい、と思いながら
相手を「問題」として見ている状態。

それが箱。

自分はちゃんとやっている。
相手が分かっていないだけだ。

そう整理すると、自分は正当化される。

でもその瞬間、
相手は人ではなくモノになる。

役割や、障害物や、
解決すべきタスクになる。

相手を“モノ”ではなく“人”として見ること。
自分の正しさを一度、横に置くこと。

理屈はシンプルだ。

例えば自分を非難してくる相手に対して
簡単に箱から出れるか?
実践は、思っているより難しい。

本書は言う。
箱から出れば人間関係は改善し、
結果として生産性も上がる、と。

それは理解できる。
実際、そうだろう。

でも物語の成果を生産性に集約してるところには
少しだけ引っかかった。

箱から出ることは、
成果のための手段なのか。

むしろそれは、
どう在るかという心も持ちようの問題ではないか。

ビジネス本として体裁はあるのですが。
私は、「あるがままに相手を見る」
という一点に哲学性を感じました。

まあ、生きてると批判される事もあります。
ですが、箱の外に出て考えると、
批判してくる相手の弱さを感じれます。

この「箱」という思考法は本当に有用で、

相手が正しいかどうかではなく、
自分が正しいかどうかでもなく、

いま、箱に入っているかどうか。

それだけを意識する。

それだけで、
少しだけ心が落ち着きます。

 

実際はすぐ箱に戻ります。
でも、「戻っている」と気づけるようになった。
それだけでも、本当にいい本だったなと思います。

 

それでは良い中年ライフを!


 

sunset-vibes.jp

当サイトでは、アフィリエイトプログラムを利用しています。
リンク経由で商品を購入いただくと、適格販売に基づき収益を得る場合があります。